
フリーレントをつける前に|メリットと注意点、判断の順番
空室が二か月、三か月と続くと、ポータルサイトを開くたびに気持ちが重くなりますよね。 そんなとき、ふと目に入るのが「フリーレント1ヶ月」の文字。うちもつけたほうがいいのかな、でも家賃をいじるのは怖いな——そんな迷いの中にいる方は、きっと少なくないと思います。
フリーレントは、うまく使えば「募集賃料を下げずに、実質の値引きだけ効かせる」ことができる一手です。ただ、つけ方や契約の詰め方を間違えると、あとで思わぬ持ち出しになることもあります。だからこそ、勢いで決める前に一度整理しておきたい条件です。
結論:フリーレントは「家賃を下げる」の前に検討したい選択肢です。判断の順番は、①家賃減額案と年間ベースの減収額を並べて比べる → ②オーナーに数字で相談して合意を残す → ③短期解約への備え(違約金特約の要否)を決める → ④起算日・日割りを契約書で明確にする、の4ステップ。今日は①の「並べて比べる」一枚を作るところから始めましょう。
いきなり全部を詰めなくて大丈夫です。まずは次の3つが見えていれば、判断はぐっと落ち着きます。
- フリーレントと家賃減額、それぞれ「1年・2年で見た減収額」がいくらか
- フリーレント期間中に早期退去されたときにどう備えるか
- オーナーの合意を、数字を添えて書面やメールに残せているか
この3つがつながっていれば、勢いではなく根拠で決められます。
そもそもフリーレントとは

フリーレント(free rent)は、入居後の一定期間(多くは1〜2か月)の家賃を無料にする募集条件のことです。初期費用の負担を軽くする「初期費用調整」の一種で、募集賃料そのものは下げずに、入居者が最初に感じるハードルだけを下げられるのが特徴です。
家賃を下げるのとの一番の違いは、元に戻せるかです。家賃を月5,000円下げると、その物件の賃料水準は基本的にずっと下がり続けます。次の更新にも、いずれ売却するときの利回り計算にも効いてきます。一方でフリーレントは、無料にするのは最初の一区画だけ。翌月からは満額の家賃が入るので、募集賃料の水準は保てます。
ポータルサイト上でも「フリーレント1ヶ月」は目に留まりやすく、初期費用を気にしている検討者の背中を押しやすい、という面もあります。
メリットと注意点を、数字で見比べる
メリットと注意点は、言葉より数字で並べたほうがはっきりします。たとえば月8万円の部屋を例に、2年住んでもらう前提でざっくり比べてみます。
- 家賃を5,000円下げる場合:8万円→7.5万円。減収は月5,000円 × 12か月 = 年6万円。2年で12万円の減収になり、しかも入居が続く限りその後も減り続けます。
- フリーレント1か月をつける場合:無料にするのは初月の8万円のみ。減収は8万円で、翌月からは満額。2年で見ても持ち出しは8万円にとどまり、募集賃料は8万円のまま保てます。
こうして並べると、長く住んでもらえるなら、フリーレント1か月(8万円)のほうが家賃減額(2年で12万円)より減収が小さく、賃料水準も守れることが見えてきます。数字はあくまで一例なので、ご自身の物件の家賃・想定入居期間で置き換えて計算してみてください。日割り家賃の考え方は日割り家賃 計算機も使えます。
ただし、フリーレントには気をつけたい点もあります。
- 早期退去のリスク:無料の期間だけ住んで短期で退去されると、値引き分がまるごと持ち出しになります。備えとして、一定期間内の解約で違約金をいただく「短期解約違約金特約」の要否を検討しておくと安心です。
- 起算日と日割りの扱い:「無料期間はいつから数えるか」「途中入居のときの日割りはどうするか」を契約書で明確にしておかないと、あとで解釈が食い違いやすいところです。
- オーナーの合意と公平感:減収はオーナーの収益に直結します。数字を添えて相談し、合意をメールや書面で残しておくと、後々の「言った・言わない」を防げます。既存入居者との公平感が気になる場合も、募集時限りの条件だと整理しておくと説明しやすくなります。
- 表示と実態を合わせる:広告の「フリーレント◯ヶ月」は、実際の契約条件と一致させます。期間や条件があいまいなまま強く打ち出すと、誇大な表示になりかねません。
判断の前に確認したいことの考え方
フリーレントをつけるか迷ったとき、自分用のチェックとして手元に置いておくなら、こんな観点があると後が楽です。全部を一度に埋める必要はありません。忙しいときは、判断に直結する最初の2つだけ押さえれば、まずは十分です。
- 【最低ライン】家賃減額案と、1年・2年で見た実質減収額を並べて比べたか
- 【最低ライン】オーナーに数字を添えて相談し、合意をメール・書面で残したか
- フリーレント期間中の早期退去に備え、短期解約違約金特約の要否を検討したか
- 無料期間の起算日・途中入居時の日割りの扱いを契約書で明確にしたか
- 募集広告の「フリーレント◯ヶ月」の表示が、実際の契約条件と一致しているか
下の3つは、手が回らなければ契約を詰める段階で確認しても構いません。大事なのは、フリーレントを「家賃を下げるかどうか」と切り離さず、同じ土俵で見比べてから決めることです。
なお、条件を動かす前にできることは、実はまだ残っているかもしれません。家賃やフリーレントに手をつける前の選択肢は募集条件の見直し、家賃を下げる前に試せる選択肢に、内見はあるのに決まらないときの室内の見直しは内見はあるのに決まらない、設備と清掃から見直す順番にまとめています。あわせて見ておくと、フリーレントを「最後の一手」として落ち着いて使えます。

最後に
空室が長引くと、いちばん手前にある「家賃」に手が伸びがちです。でも、家賃は一度下げると戻しにくく、オーナーの収益にも長く効きます。フリーレントは、その前に置ける「戻せる値引き」の選択肢です。
完璧な判断を一度で出さなくて大丈夫です。今日は、フリーレント案と家賃減額案の減収額を並べた一枚を作る。それだけで、次にオーナーと話すときの言葉は、ずっと落ち着いたものになります。焦って決めなくていい。比べて選べる材料が手元にあれば、それでもう前に進んでいます。
よければ、こちらも
家賃やフリーレントに手をつける前の選択肢は募集条件の見直し、家賃を下げる前に試せる選択肢に、退去から募集開始までの動き方は退去予告から募集開始まで、空室期間を縮める段取りリストにまとめています。物件の魅力を伝える図面づくりはマイソク(募集図面)の作り方、魅力が伝わる情報の並べ方もあわせてどうぞ。