
更新を機に家賃保証会社へ切り替える|連帯保証人からの進め方
更新の書類を用意していて、ふと連帯保証人の欄で手が止まることはありませんか。 「この保証人さん、もうかなりご高齢だったな」「いざ滞納が起きたとき、連絡がついて対応してもらえるだろうか」。契約したときは問題なかった保証人の体制が、年月が経つうちに心もとなく感じられてくる——そんな引っかかりです。
そこで頭をよぎるのが、「更新のタイミングで、家賃保証会社に切り替えられないだろうか」という発想です。でも、いざやろうとすると、入居者にどう切り出すのか、費用は誰が持つのか、断られたらどうするのか、迷いどころが一気に出てきますよね。ここで、無理なく進めるための順番を一緒に整理しておきましょう。
結論:まず押さえたいのは、保証の仕組みを連帯保証人から家賃保証会社へ変えることは「契約条件の変更」であり、入居者の同意なしに一方的には切り替えられないということです。だからこそ、契約を結び直す更新のタイミングが、自然に相談を持ちかけられる数少ない機会になります。進め方は、①現状の保証体制を確認する → ②切り替えの必要性を自分の中で整理する → ③費用負担を決めて入居者に提案する → ④保証会社の審査・契約 → ⑤既存の連帯保証をどう扱うか整理する、という順番です。焦って一度に進めず、まず1件、現状確認から始めます。
何が起きているか
「連帯保証人から保証会社へ」という切り替えの相談が増えている背景には、いくつかの事情が重なっています。
ひとつは、連帯保証人の高齢化です。契約時は現役だった親御さんや親族が、更新を重ねるうちに高齢になり、いざ滞納や事故が起きたときに連絡がつきにくかったり、対応をお願いしづらかったりする。保証人という仕組みが、実態として動きにくくなっていくのです。
もうひとつは、2020年施行の改正民法です。個人が連帯保証人になる場合、契約書に極度額(保証の上限額)の記載がないと保証契約そのものが無効になる、という扱いに変わりました。古い契約書のまま更新を続けている物件では、この極度額の記載が抜けていることもあり、更新を機に保証の中身を見直したいという動機につながっています。
そして、滞納対応の負担です。連帯保証人への連絡・督促は、管理担当者にとって精神的にも重い仕事です。家賃保証会社であれば、滞納時の督促や代位弁済を仕組みとして担ってくれるため、担当者一人で抱える場面を減らせます。
つまり切り替えの話は、「保証人が悪い」という話ではまったくなく、時間の経過と制度の変化に合わせて、保証の体制を今の実態に合わせ直すという実務なのです。
具体例:更新を機に進める順番

実際に動くときは、次の順番でたどると迷いにくくなります。
1. 現状の保証体制を確認する その契約の保証がいまどうなっているかを、契約書で確かめます。連帯保証人が誰で、極度額の記載があるか、更新契約書は何を引き継ぐ形になっているか。ここが出発点です。
2. 切り替えの必要性を自分の中で整理する なぜ切り替えたいのかを言葉にしておきます。「保証人が高齢で連絡が難しい」「極度額の記載がなく保証が不確か」「滞納対応を仕組みで支えたい」——理由がはっきりしているほど、入居者にも誠実に説明できます。オーナー物件なら、この段階でオーナーの意向も確認しておきます。
3. 費用負担を決めて、入居者に提案する ここが一番の山場です。家賃保証会社を使うと、初回保証料(家賃の0.5〜1か月分程度が一つの目安)や年間の更新保証料(1万円前後など)といった費用が発生し、多くの場合これを入居者が負担します。既存の入居者に新たな負担をお願いする形になるため、「なぜ切り替えたいのか」「いくらかかるのか」を正直に伝え、あくまでお願いとして提案します。強制ではない、という姿勢が伝わることが大切です。
4. 保証会社の審査・保証委託契約 入居者の同意が得られたら、保証会社の申込・審査に進みます。審査結果によっては希望どおりにならないこともあるため、結果が出るまでは既存の保証を維持しておきます。
5. 既存の連帯保証をどう扱うか整理する 保証会社の契約が整ったら、従来の連帯保証人の扱いをはっきりさせます。保証会社に一本化するのか、当面は併用するのか。連帯保証人には、役割が終わる(または変わる)ことを書面で丁寧に伝えると、後の認識のずれを防げます。
影響:進め方ひとつで、信頼関係が変わる
この切り替えは、やり方によって入居者との関係に大きく差が出ます。
費用負担の伝え方:新たな出費のお願いなので、唐突に「更新の条件です」と通知すると、入居者は「値上げされた」と受け取りかねません。理由と金額をセットで、余裕をもって相談することが、納得につながります。
「更新の条件」として強要しない:保証会社への加入を更新の絶対条件にして、応じなければ更新しない——といった進め方は、状況によっては条件変更の押しつけと受け取られ、トラブルのもとになります。原則はお願いベースで、断られた場合の落としどころも用意しておきます。
断られたときの代替案:入居者が切り替えに応じない場合もあります。そのときは、連帯保証人を継続しつつ、極度額を契約書に明記し直す、保証人の連絡先を最新に更新する、といった形で、いまの保証を少しでも確かなものに整え直すのが現実的です。ゼロか百かで考えず、「今より一歩安心な状態」を目指します。
保証の切り替えは、突き詰めれば「万一のときにお互いが困らないための備え」です。その気持ちが伝われば、入居者も前向きに検討してくれやすくなります。
明日やること
今日、全物件を切り替える必要はありません。まずは気になっている1件から動いてみましょう。
- 直近で更新を迎える契約を1件開き、連帯保証人が誰で、極度額の記載があるかを確認する
- その契約について「なぜ保証会社に切り替えたいのか」を一文で書き出してみる
- 自社(またはオーナー)が付き合いのある保証会社の、初回保証料・更新保証料と、負担者の一般的な扱いを調べておく
このうちひとつ確認できれば、入居者に相談を切り出すときの言葉が、ぐっと具体的になります。
チェックリスト
更新を機に保証会社へ切り替えるか検討するとき、手元で順番に確認したい項目です。上から順にたどれば大丈夫です。
- その契約の連帯保証人が誰で、現在も連絡がつく状況かを把握しているか
- 契約書に極度額の記載があるか(個人保証で記載がなければ保証が無効になり得る点を確認)
- 切り替えたい理由を、入居者に説明できる言葉で整理したか
- オーナー物件の場合、オーナーの意向を確認したか
- 初回保証料・更新保証料の金額と、誰が負担するかを事前に決めたか
- 入居者へは「更新の絶対条件」ではなく、お願いとして提案する形にしているか
- 保証会社の審査結果が出るまで、既存の保証を維持する段取りになっているか
- 入居者に断られた場合の代替案(極度額の明記・保証人情報の更新など)を用意したか
- 切り替え後、従来の連帯保証人へ役割の変更・終了を書面で伝える流れにしているか
保証会社の費用や審査の扱い、既存の連帯保証をどう終了させるかは、保証会社ごとの規定や個別の契約内容によって変わります。ここで挙げた金額はあくまで一般的な目安であり、断定するものではありません。判断に迷う条項は、自己判断で決めず、契約書と、必要に応じて保証会社や専門家への確認を挟むと、自分もオーナーも入居者も守れます。
よければ、こちらも
連帯保証人に関わる極度額の考え方は連帯保証の「極度額」、契約書での記載のポイントに、家賃保証会社を使っているときの滞納対応は家賃保証会社へ代位弁済を依頼するときの手順と準備書類にまとめています。更新まわりの実務全体は更新料の有無と金額、契約書と地域慣習をどう確認するかとあわせて読むと、つながって整理できます。

最後に
保証人から保証会社への切り替えは、「万一のとき、誰も困らないようにしておきたい」という、静かで誠実な備えの実務です。強制はできないぶん、入居者の同意という壁はありますが、更新という節目に、理由を丁寧に伝えれば、応じてもらえる余地は十分にあります。
すべての物件を今日そろえなくて大丈夫です。まず1件、保証人の欄と極度額の記載を確認してみる。その小さな一歩から、保証の体制は少しずつ、今の実態に合ったものへ整っていきます。