集合住宅のエントランスで、チラシがあふれる集合ポストを前に、入居者から相談を受けている賃貸管理担当者

エントランスのチラシ投函・勧誘・貼り紙、迷惑行為に落ち着いて対応する順番

「ポストを開けるたびにチラシがどさっと落ちてくるんです」「昨日、知らない人がオートロックの中まで入ってきて、ドアをノックされて……」。 入居者からこんな相談が来ると、少し構えてしまいますよね。騒音やゴミ出しと違って、相手は入居者ではなく建物の外の誰か。どこの誰に、何を言えばいいのかが見えにくい相談です。

それでも、入居者にとっては「毎日通る玄関」の話です。小さな不快の積み重ねが、そのまま「この建物、ちゃんと管理されているのかな」という不安につながっていきます。逆に言えば、ここに手が入ると、住んでいる人の安心感は目に見えて戻ります。

結論:エントランスの迷惑行為は、①相談の中身を「チラシ投函」「訪問勧誘」「無断の貼り紙」の3つに分ける → ②建物としての意思表示(お断りの掲示)を整える → ③連絡先が分かる相手には管理会社から丁寧に停止を依頼する → ④入居者には「断ってよい」「困ったら相談を」と全体に案内する、の順で進めると、角を立てずに減らしていけます。しつこい・怖いと感じるケースは、ひとりで抱えずオーナーや社内、警察の相談窓口につなぎます。

何が起きているか

エントランスまわりの迷惑行為は、ひとまとめに「迷惑なチラシ」「迷惑な勧誘」と呼ばれがちですが、中身はいくつかに分かれます。

いちばん多いのは、チラシの投函です。不動産の買取、不用品回収、水道や鍵のトラブル対応、宅配ピザ、地域のお店の案内。一枚一枚は悪意のないものでも、毎日重なると集合ポストがあふれ、床に落ちたチラシが散らかって、エントランス全体が荒れた印象になります。

次に、訪問勧誘です。オートロックの建物でも、入居者が出入りするタイミングに合わせて一緒に入ってくる、いわゆる「共連れ」で中まで来てしまうことがあります。新聞・通信回線・宗教・投資の勧誘など種類はさまざまですが、入居者にとっては「中まで入られた」こと自体が不安の種になります。なかには「管理会社から来ました」「点検です」と名乗るケースもあり、こうなると入居者はとても判断しにくくなります。

そして、無断の貼り紙です。外部の業者がマグネット広告やステッカーを貼っていくこともあれば、入居者が「夜うるさい部屋の方へ」のような苦情の紙を掲示板やエレベーターに貼ってしまうこともあります。同じ「貼り紙」でも、前者は外からの迷惑、後者は入居者同士のトラブルの入り口で、扱い方がまったく違います。

どれも、管理担当者が見ていない時間に起きることばかりです。だから「気づけなかった」と自分を責める必要はありません。相談が来た今が、手を入れるいちばんいいタイミングです。

具体例:3つに分けて、それぞれの打ち手を決める

チラシ投函・訪問勧誘・無断の貼り紙という三つの迷惑行為を左から順に並べた図
まず「チラシ」「勧誘」「貼り紙」のどれかに分けると、次に何をすればいいかが見えてくる。

相談を受けたら、まず「いつ・どこで・何があったか」を聞いて、3つのどれに当たるかを分けます。チラシなら現物や写真、勧誘なら日時と名乗った名前・会社名、貼り紙なら場所と写真。ここがそろうだけで、次の一手がずいぶん打ちやすくなります。

① チラシの投函:お断りの掲示と、投函元への依頼

チラシは、建物として「お断り」の意思をはっきり示すところから始めます。

依頼するときは、責める調子にはしません。「〇〇マンションを管理している〇〇です。入居者の方からポストがいっぱいになるとのご相談があり、こちらの建物への配布を控えていただけないかと思いご連絡しました」。これくらいの温度で十分です。配布をしない建物を一覧で管理しているポスティング会社もあり、丁寧に伝えれば対応してもらえることは少なくありません。依頼した日・相手・返答は、簡単でいいので記録しておきます。

集合ポストの横にチラシ用の回収箱を置くかどうかは、建物によって向き不向きがあります。ポストの中が片づく一方で、回収箱があふれたり、個人宛ての郵便物がまぎれて捨てられたりする心配もあるので、置くならオーナーと相談し、回収する頻度まで決めておきます。

② 訪問勧誘:入居者に「断ってよい」を伝える

勧誘そのものを管理会社が止めるのは、なかなか難しいところです。だからこそ、入居者が安心して断れるように、全体への案内を先に整えます。

最後のひとつは、とても効きます。「管理会社から来た」「点検に来た」と名乗る訪問があっても、事前の案内がなければ、入居者は「掲示が出ていないからおかしいかも」と立ち止まれるようになります。玄関を開けずにインターホン越しに断ってかまわないこと、判断に迷ったら管理会社に電話してよいことも、あわせて書いておきます。

もし入居者が訪問販売で契約してしまい困っている、という相談が来たときは、ひとりで答えを出そうとせず、消費者ホットライン(188)を案内します。契約の中身によっては、取り消しや解約の相談ができることがあるからです。高齢の入居者が続けて勧誘に遭っているようなら、ご家族や地域の窓口とのつなぎ方も考えておくと安心です(認知症かもしれない高齢入居者の見守りにもまとめています)。

③ 無断の貼り紙:まず写真、それから「誰が貼ったか」で分ける

貼り紙を見つけたら、剥がす前に写真を撮って日付と場所を記録します。そのうえで、貼ったのが外部か入居者かで扱いを分けます。

外部の業者によるもの(マグネット広告、ステッカー、業者のチラシの貼り付け)は、建物の掲示のルールに沿って撤去します。どこまで管理会社の判断で外してよいかは、管理委託の範囲にもよるので、「外部の広告物は見つけしだい撤去し、写真で報告する」といった方針を、オーナーとあらかじめ決めておくと迷いません。連絡先があれば、①と同じように丁寧に掲示の停止をお願いします。

入居者が貼ったもの、とくに「〇号室の方へ、夜うるさいです」のような苦情の紙は、別の相談の入り口です。貼った人も、それだけ困っていたということ。いきなり剥がして終わりにせず、写真を残したうえで外し、「共用部への掲示は管理会社を通してお願いします。お困りのことがあればご連絡ください」と全体に案内します。名指しされた側への配慮も含めて、中立の立ち方は入居者同士のトラブルで「どっちの味方?」と迫られたらが近い話です。

④ しつこい・怖いと感じるときは、ひとりで抱えない

掲示や依頼をしても、同じ業者が何度も来る。入居者が「怖い」と感じるような言動がある。そういうときは、管理担当者ひとりで何とかしようとしなくて大丈夫です。

悪質なケースで法的にどう扱えるかは、状況によって変わります。そこは自分で判断を背負わず、警察や専門家の意見を聞きながら進める、という線を引いておくと気持ちが楽になります。

影響:玄関が整うと、建物の印象が変わる

エントランスは、入居者が毎日かならず通る場所で、内見のお客様が最初に目にする場所でもあります。チラシが床に散らかっている、壁に知らない貼り紙が残っている。それだけで「この建物は見られていないのかな」という印象になってしまいます。

反対に、お断りの掲示が整い、ポストまわりが片づいていると、入居者は「言えば動いてくれる管理会社だ」と感じます。勧誘に対しても「断っていいんだ」「迷ったら管理会社に聞けばいいんだ」と分かっているだけで、不安はずいぶん小さくなります。派手な対策ではありませんが、住んでいる人の毎日の安心に、いちばん近いところにある仕事です。

明日やること

一度に全部を整えなくて大丈夫です。相談のあった1棟について、次のどれかひとつだけ動かしてみましょう。

写真が1枚あるだけで、オーナーへの報告も、次の打ち手の相談もぐっとしやすくなります。

チェックリスト

最低限の段階から進めて、必要になったら拡張へ移ります。

最低限版

拡張版(できると安心)

最後に

エントランスのチラシや勧誘は、相手の顔が見えないぶん、「どうせまた来るし」と後回しにしたくなる相談です。それでも、入居者がわざわざ連絡をくれたのは、毎日通る玄関で小さな不安を感じ続けていたから。その声を受け止めて、掲示を一枚出す。それだけで、「ここは見てもらえている建物だ」と伝わります。

感謝されにくい仕事ですが、人が安心して「ただいま」と帰ってこられる玄関を守っているのは、あなたのその一枚です。今日は、エントランスの写真を1枚撮るところから始めてみましょう。

すっきり片づいた集合ポストの前で、帰宅した入居者と笑顔であいさつを交わす賃貸管理担当者
玄関が整うと、「ただいま」の顔が少しやわらかくなる。

よければ、こちらも

共用部に置かれた私物への声かけの順番は共用部の私物放置、片づけてもらうまでの声かけの順番に、角を立てない掲示文の考え方はゴミ出しルール違反の掲示、角を立てずに伝える貼り紙の考え方にまとめています。オートロックまわりの案内はオートロック・エレベーターの故障、復旧まで不安にさせない案内の順番、宅配ボックスの困りごとは宅配ボックスが満杯・取り違え、責めずに回転を戻す対応の順番もあわせてどうぞ。

関連用語