入居前の空室でスマートフォンを構えて室内を撮影する賃貸管理担当者

入居時の室内写真、退去精算でもめないための撮り方と残し方

「退去のとき、この傷は入居前からありましたよね?」。 精算の場でそう言われて、はっきり答えられず言葉に詰まった——そんな経験はありませんか。

入居者は「最初からあった」と言う。記録は手元にない。だからといって強くも言えず、結局こちらが負担する形でおさめる。退去精算でいちばんもめやすいのは、傷や汚れが「いつからのものか」がわからないときです。そして、そのほとんどは、入居時の写真が残っていれば防げたものだったりします。

結論:退去精算のもめごとを減らす鍵は、退去のときではなく「入居時」にあります。やることはひとつ、室内の状態を写真で残しておくこと。完璧な記録でなくて大丈夫。日付がわかる形で、気になる箇所を押さえておくだけで十分です。

入居時の写真は、難しく考えなくて大丈夫です。次の3つを意識するだけで、後の精算でぐっと役に立ちます。

  1. 全体(部屋ごと)→ 気になる箇所のアップ、の順で撮る
  2. 日付がわかる形で残す(撮影日が記録されるように)
  3. 入居者と一緒に確認し、認識をそろえておく

この3つができていれば、その記録は退去のときにあなたを助けてくれます。

手順を小さく分けて

全体・アップ・共有の三段階で入居時の写真を残す賃貸管理担当者

ひとつずつなら、引き渡しのついでに進められます。

まず、全体を撮る。部屋ごとに、入口から部屋を見渡すように一枚ずつ撮ります。どの部屋のどこを写したものか、後で見て迷わないことが大事です。リビング・各居室・キッチン・洗面・浴室・トイレ・玄関・バルコニーと、場所を決めて順番に回ると撮り漏れが減ります。

次に、気になる箇所をアップで撮る。入居前からある小さな傷・へこみ・汚れ・設備の不具合は、近づいてもう一枚。フローリングのこすれ、壁紙のはがれ、建具のすき間、コンロや換気扇の汚れなどは、後で「最初からあった」と示せると安心です。アップだけだと場所がわからなくなるので、必ず全体写真とセットにしておきます。

そのあとで、入居者と共有する。可能なら、引き渡しのときに入居者と一緒に室内を見て回り、気になる箇所をその場で確認します。「ここ、もともと少し傷がありますね」と一言そえてお互いに認識をそろえておくと、退去時の「言った・言わない」が起きにくくなります。

撮るときに押さえたい観点

明るい窓辺で記録を終えて穏やかな表情を見せる賃貸管理担当者

写真を残すときに、こんな点を意識しておくと後で効きます。

保存は、撮って終わりにせず「その物件・その入居のもの」とわかる形でまとめておくのがコツです。物件名と部屋番号、入居日でフォルダを分けておくと、数年後の退去時にすぐ取り出せます。スマホの中だけだと機種変更で消えてしまうことがあるので、クラウドや管理システムなど、別の場所にもう一つ残しておくと安心です。

なお、写真があれば必ず負担を求められる、というわけではありません。経年劣化や通常損耗は原則として貸主負担と整理されており、写真はあくまで「いつからの状態か」を示す材料です。どこまでが入居者負担になるかは状況や契約内容によって変わるため、判断に迷うときは自己判断で押し切らず、契約書の内容を確認し、必要なら専門家に相談する流れにしておくと安心です。負担の線引きの考え方は、経年劣化と通常損耗の違い、貸主負担になりやすい箇所の整理メモもあわせてどうぞ。

最後に

入居時の写真は、撮ったその日には何の手応えもない作業です。役に立つのは、早くても数年先。だからつい後回しになりがちです。それでも、引き渡しのときにスマホを構えて一回り記録しておけたなら、それは未来の自分と入居者の双方を、いらぬ言い争いから守る準備になっています。

感謝されにくい仕事ですが、人の暮らしを支えている仕事です。今日は、次の引き渡しで一回り撮ることだけ覚えておけば十分。退去のときに困らない仕組みは、こうした小さな記録の積み重ねでつくれます。

関連して、退去・原状回復のトラブルを早めにほぐす考え方や、備えの総点検として原状回復トラブル防止チェックリストもあわせてどうぞ。

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