事務所の机で、前回の契約書と新しい更新契約書を左右に並べて見比べる賃貸管理担当者

更新契約書の作り方|前回のコピーで変更点を漏らさない確認の順番

更新の季節、書類の山を前に「前回の契約書をコピーして、日付だけ直せば早いな」と思ったこと、ありませんか。 そして送ったあとに、「あれ、家賃はこの前改定したはず」「保証人、変わっていなかったっけ」と、ひやっとしたことも。

更新契約書は、毎回ゼロから作るものではありません。前回の書面を土台にするのは、むしろ自然なやり方です。困るのは、前回から変わったことが、古いまま残ってしまうこと。今日は、土台を活かしながら変更点だけを確実に反映する、更新契約書の作り方を一緒に整理していきましょう。

結論:更新契約書は、①作る前に「前回から変わったこと」を書き出す(家賃・期間・更新料・契約者や同居人・保証・特約)→ ②変わる項目を、書面の中で一か所ずつ反映する(原契約を引き継ぐ部分と、今回変わる部分を分けて書く)→ ③読み合わせと返送後の照合で、もう一度確かめる、の3段階で作ります。全部を一人で完璧にしなくて大丈夫です。「書き出すメモ」を一枚用意するだけで、漏れはぐっと減ります。

まずは、次の3つが手元にそろっているか見てみましょう。

  1. 前回の契約書(原契約)と、これまでの更新契約書・覚書
  2. 更新案内で入居者に伝えた内容(家賃・更新料・期間など)
  3. 前回の更新から今日までに、届出や相談があったことの記録

何が起きているか:コピーした書面に「前回の事実」が残る

更新契約書を作るとき、多くの現場では前回の書面やひな形をコピーして使います。手順としては合理的です。ただ、コピーした書面には、前回の時点での事実がそのまま残っています。

2年のあいだに、契約まわりでは意外と多くのことが変わります。

こうした変更は、そのつど別の書面や記録で手続きしていても、更新契約書を作る人の目に入らないことがあります。担当が変わっていればなおさらです。結果として、日付と期間だけ新しく、中身は2年前のまま、という書面ができあがってしまいます。

これは担当者の注意が足りないからではありません。変更の情報があちこちに散らばっていることが原因です。だから、作る前に一度、散らばった情報を一か所に集めておく。それがいちばん効く手当てになります。

作り方を小さく分けて

更新契約書づくりを「書き出す」「反映」「照合」の3段階で進める流れを示した図
変わったことを書き出す → 書面に一か所ずつ反映する → 読み合わせと返送後に照合する、の3段階で作る。

① 作る前に、「前回から変わったこと」を書き出す

更新契約書を開く前に、まずメモを一枚用意します。前回の書面を横に置き、次の項目を一つずつ「変更あり/なし」で埋めていきます。

項目確かめる場所
契約期間(新しい始期・終期)原契約の期間と、前回の更新契約書
賃料・共益費・駐車場代改定の合意書、入金の記録
更新料(金額と計算の基準)原契約の条項、今回の更新案内
契約者・同居人同居人の追加・退去の届出
連帯保証人・保証会社保証会社の契約状況、保証人の状況確認の記録
特約・承諾事項ペット・楽器・駐車場などの承諾書
緊急連絡先・火災保険更新前の確認シート、保険の加入状況

ポイントは、書面を作る前にこれを埋めることです。書面を作りながら確かめようとすると、どうしても目の前の文面に引っ張られて、「書いていないこと」に気づきにくくなります。契約者や同居人の現状を確かめる手順は契約更新の前に、契約者と同居人の現状を確認するチェックシートに、緊急連絡先の最新化は賃貸の緊急連絡先、更新のときに最新化する段取りと確認の文例にまとめています。

② 変わる項目を、書面の中で一か所ずつ反映する

更新契約書(「更新合意書」「覚書」と呼ぶ会社もあります)の形は、大きく2つあります。

どちらが正しいということはなく、会社やオーナーの方針、原契約の作り方によって選びます。迷ったら、これまで物件で使ってきた形にそろえるのがいちばん混乱しません。

どちらの形でも大切なのは、①のメモで「変更あり」にした項目を、書面の中の該当箇所に一つずつ反映し、反映したらメモにチェックを入れることです。とくに見落としやすいのは、次のような箇所です。

具体例で見てみます(数字は説明用の例です)。原契約に「更新料は新賃料の1か月分」と定めがあり、今回の更新で家賃を月72,000円から75,000円に改定することで合意していたとします。

このとき更新料は、新賃料の1か月分なので 75,000円です。ところが前回の書面をコピーすると、更新料の欄には前回と同じ 72,000円が残りがちです。差は 75,000円 − 72,000円 = 3,000円。小さな差に見えますが、更新案内と書面で金額が食い違うと、入居者さんは「どちらが本当?」と不安になり、確認のやり取りが一往復増えます。更新料の基準がどう定められているかは、原契約の条項で必ず確かめましょう。考え方は更新料はいくら?有無と金額を、契約書と地域慣習から確かめる手順に整理しています。

保証の欄も丁寧に見ておきたいところです。個人の連帯保証人に、更新後も引き続き保証をお願いする場合、保証の書面を改めて交わすかどうかによって、極度額(保証の上限額)の記載が必要になる場面があります。扱いに迷うときは、会社の方針や専門家の見解を確かめてから書面を整えると安心です。考え方は連帯保証の「極度額」、契約書での書き方と確認のポイントを、保証会社への切り替えは更新を機に家賃保証会社へ切り替える|連帯保証人からの進め方をどうぞ。

③ 読み合わせと返送後の照合で、もう一度確かめる

書面ができたら、送る前に一度だけ読み合わせをします。理想は、作った人とは別の人に見てもらうことです。一人で担当している場合は、作ってから少し時間を置いて、①のメモを片手に「メモ → 書面」の順で照合します。書面を頭から読むより、メモの項目を一つずつ書面の中で探すほうが、漏れに気づきやすくなります。

更新案内とも突き合わせておきましょう。案内で伝えた家賃・更新料・期間と、書面の数字が一致しているか。ここがそろっていれば、入居者さんからの問い合わせはぐっと減ります。案内の書き方は更新のご案内、何をどう書く?そのまま使える通知書の型と文例にまとめています。

そして、書面が返ってきたら、最後の照合です。

電子契約で取り交わす場合も、確かめることは同じです。電子での取り交わしの前提は賃貸契約書はメールで送っていい?電子交付とIT重説の基本を参考にしてください。返ってこないときの進め方は更新書類が返ってこない…期限を管理して催促する段取りメモにあります。

影響:「コピーして日付だけ」が、確かな土台に変わる

作る前に書き出す、一か所ずつ反映する、照合する。この流れができると、前回の書面をコピーすることは「手抜き」ではなく、確かな土台を活かすやり方に変わります。

入居者さんにとっては、案内と書面の数字がそろっていて、今の暮らしがきちんと反映された書面が届く。それだけで「ちゃんと見てくれている」という安心につながります。オーナーにとっても、保証や特約が今の状態で整っていることは、いざというときの備えになります。

そして担当者にとっては、①のメモが次の更新のときの引き継ぎ資料になります。2年後に担当が変わっていても、「前回、何が変わったか」がひと目でわかる。その一枚が、未来の誰かを助けます。

明日やること

今日はここだけ確認できれば十分です。

チェックリスト

更新契約書づくりの確認用です。全部を一度に埋めなくて大丈夫。忙しいときは、【最低ライン】の3つだけでも押さえておけば、大きな食い違いは防げます。

作る前に書き出す

書面に反映する

照合する

なお、更新契約書の形式や記載事項は、原契約の定め、会社やオーナーの方針、契約の種類(普通借家か定期借家か)によって変わります。定期借家の場合は「更新」ではなく再契約の手続きになるため、定期借家の再契約、普通借家との違いと段取りもあわせて確認してください。判断に迷う条項は、会社の方針や専門家の見解を確かめてから整えると安心です。

整えた更新契約書をファイルに収め、すっきりした表情で窓の外を見る賃貸管理担当者
一枚のメモが、次の更新の自分を助けてくれる。

最後に

更新の時期は、案内、書類、入金の確認と、手が足りなくなりがちですよね。そんな中で前回の書面をコピーするのは、限られた時間をうまく使うための、ちゃんとした工夫です。

足すのは、作る前のメモ一枚だけ。「前回から何が変わったか」を一度書き出しておけば、あとはそれを一つずつ反映して、照らし合わせるだけです。今の暮らしが正しく映った書面を届けようとしているあなたのその丁寧さが、入居者さんとオーナーの安心を、静かに支えています。まずは次の1件から、試してみましょう。

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